Monday, April 30, 2012

2012年 開催されるゲイパレードは2つ

Tokyo gets double dose of gay pride for 2012
LGBT community deserves to be spoilt for choice after a parade-free 2011

2012年 開催されるゲイパレードは2つ パレードが開催されなかった2011年の反動でLGBTコミュニティーの活動はさらに活発に トビー・シグエンザ 著 レズビアンやゲイ、バイセクシャル、トランスジェンダーのコミュニティー(LGBT)にとって、ゲイパレードの目的とは、同性愛者の多様性(ダイバーシティー)や、より寛容な受け入れ体制を社会に訴えるような啓蒙活動に限ったことではない。

サポーターの数をさらに増やしたり、パレードに参加して思いっきり楽しんだりすることも目的のひとつだ。世界各国で開催されているゲイパレードでよく目にするのは、LGBTやサポーター達が、煌びやかな衣装を身に着け、豪華に飾った山車を先頭に、街をダンスしながら練り歩き、同性愛や仲間との一体感、ゲイカルチャーを誇らしげに披露している光景ではないだろうか(いわゆる英語の「Pride」)。 これまでと同様、開催地は東京。

違うのは、4月29日の東京レインボーパレード(TRP)と8月11日の東京プライド(TP)の2つが開催されることだ。 当然のことながら、2つのゲイパレードの開催を巡って、LGBTとサポーター達の間で混乱が生じ、数多くの質問や問い合わせが殺到している。たとえば、「東京プライドと東京レインボープライドの違いは何?」、「どうしてパレードが二つもあるの?」、また、LGBTからは「パレードはひとつで充分なのでは?」という意見も寄せられている。 このような疑問を解決するためにも、波乱に満ちていた短い歴史を振り返ってみたい。

1994年、日本で初めての東京レズビアン&ゲイパレード(TL&GP)が、国際レズビアン・ゲイ・バイセクシュアル・トランス・アンド・インターセックス協会(ILGA)の主催で開催された。その後の2年間、このパレードは数多くのメディアの注目を集め、パレードへの参加者も3千人を超えるほどに成長した。 . しかし、主催者同士でパレードについての論争が巻き起こり、その後の数年間は活動を停止せざるを得なかった。

やがて、2004年にTL&Gパレードはようやくカムバックを果たし、それまで以上の参加者数を集めることに成功し、パレードは2006年まで開催されていた。しかし、安心しているのも束の間、ある特定の同性愛者達が、自分達の存在が無視されているという理由で、主催者間の論争が再開してしまったのだ。 2007年には東京プライドパレードという名目で再起を果たしたものの、その翌年、パレードは突然中止されてしまった。以来、2010年までパレードは開催されず、2011年もぽっかり穴が開いたまま過ぎてしまった。 このままではプライドパレードが復活するチャンスを逃してしまう、とTRP主催者は再び集結した。2011年5月にTPの主催者に問い合わせてみると、翌年の8月にパレードを開催したいとのことだった。

当時の様子について、4月29日開催予定のTRPの主催者である乾宏輝(いぬい ひろてる)さんに聞いて見た。「TRPの主催者は、2012年夏のパレードの開催について、明確な回答を出せませんでした。」 一方、2011年からTPの主催を担当している門戸大輔(もんこ だいすけ)さんは、少し違った見解があるようだ。「パレード主催の運営委員会長に任命されたのですが、他の候補者が現れて、自分達のサポーターを集めてパレードを開催したいと言ってきたのです。

僕としても、誰がパレードを開催しようと自由だと思っていたので、特に気にはしていませんでした。ただ、別なパレードを開催するのであれば、混乱を避けるためにも名称を変えて欲しいとTRPにお願いしました。しかし、残念ながら、僕の願いは聞き入れてもらえませんでした。」 パレード実現のために多大な時間と労力を注いできた主催者達の動機や熱意について理解を深めるためにも、彼らの持つ哲学や今後の目標などについてもう少し注目してみよう。 *** 東京プライド(TP) コミュニティーをベースとしたNPO団体で、LGBTの人権保護と、対話を通して社会に変化を訴えかける活動をしている。セクシャルマイノリティー(同性愛者)に対する偏見や差別を少しでも無くし、LGBTにとって、よりフレンドリーな社会を作ることを目的としている。

 門戸さんは、「東京プライドは、同性愛者の問題は人権問題であることを社会に訴えたいのです。厚労省と東京都議会は、僕達の健康について気遣ってはくれているようですが、僕達の人権に関しては支持してもらえていません。少なくとも今は・・。

これこそが僕の今年の最優先のミッションなのです。」と語った。 最近のTPの主な活動は、昨年6月、ヒューマン・ライツ・ウォッチ(HRW)と特別非営利活動法人アフリカ日本協議会(AJF)の人道主義団体との協賛で、在日ウガンダ大使館の公使と意見交換会を開催したことだ。この意見交換で三団体は、ウガンダにおけるLGBTの人権侵害やウガンダ刑法に基づいた同性愛の犯罪化に対する懸念、ウガンダ国会で検討されていた反同性愛法案、そして、同国で同性愛者の人権活動家として著名なデビッド・カトー氏の殺害事件についても指摘した。また、同国のLGBTの人権保護、反同性愛法案の再検討、カトー氏の殺害事件への公正な判断を公的に要請した。

TPの活動家はこれまで、同性愛者やLGBTコミュニティーの支援活動を通じて、社会に多大な貢献をしている。東京プライドパレードは活動の一環として開催され、人権についての真摯なメッセージを日本の社会に訴えかけることが大きな目的となっている。 TPが団体としての社会運動を確立しはじめ、活動を維持するために積み上げられてきた努力は計り知れない。特に慎重に対応していることとして、TPの活動を働きかける組織の選定をはじめ、どんな決定を下すべきなのか、国内・海外のメディアに対してどんなメッセージを発信すべきなのか、などがある。 このように、TPはしっかりと筋の通ったカルチャーとビジョンの下、実に多くのことを達成してきた。しかし、その一方で、若手のボランティアや主催者、「プライド」の持つ意味を違った観点から捉えている人達はどうしても敬遠されてしまう傾向にあるようだ。

まさに、この敬遠されながらも同じ考えを共有する人達同士が集結して結成されたのが、東京レインボープライド(TRP)だ。 *** 東京レインボープライド 2011年5月に設立。TRPの草の根哲学は、LGBTQ(レズビアン、ゲイ、バイセクシャル、トランスジェンダー、クィア)を含む同性愛者の多様性にフォーカスし、展開している。団体名は、ゲイカルチャーのシンボルである6色レインボーにちなんで「東京レインボープライド」と名付けられた。 この団体の目的は、「LGBTの権利は人権と同様」というメッセージを社会に広めることにあるが、それを実現するには、持続性のあるイベントを定期的に開催し、開催する度に参加者を増やしていくことが必須だ。東京の街を海外にあるようなゲイフレンドリーな街にしていくことが最終的なゴール。 

「ダイナミックなアピールをするためにはパレードがもう一つ必要だと思ったんです。たったひとつのパレードを毎年開催していても、もっと良いプライド(マーチ)にしたいとは思わないでしょう。健全に競争することも大切だと思っています。」とTRPのマーケティング担当である乾さんが説明してくれた。 TRP主催者は、多様化したLGBTコミュニティーの団結力を維持するためには、なんらかの対策が必要だと強く感じている。今考えているのは、主催者とボランティアの全員が企画の段階から参加して、意見を出し合いながら皆が納得できるプライドイベントを作り上げて行くというアイデアだ。

 団結力を追求するがゆえに生じたパレードの分裂の皮肉さを感じている20代~30代の主催者達。彼らが日頃TRPに願っていることは、日本独特の縦社会をなくし、皆が同じ歩調で企画から実現までの道のりを歩めるような横社会へと変えることだと言う。 定期的なパレードの開催に向けて、TRPはこの一年の月日を資金集めや準備のための「ビルドアップ・イベント」を開催し、将来のパレードを主催する新人の教育に費やしてきた。 TRPが結成された2011年5月以来、10回の「カウントダウン・パーティー」を開催し、資金集めやボランティアとの顔合わせを兼ねて、今年のパレードの企画を進めてきた。 

今年、東京で開催される2つのパレードには、それぞれのビジョンやゴールに対する強い信念が感じられる。しかし、なかには、LGBTコミュニティーの分裂を象徴するように、パレードを2つも開催する必要はあるのかという疑問を抱く人もいれば、単にゲイイベントが増えたことを歓迎し、パレードが開催されなくとも、デカダンなパーティーを楽しめれば満足という人もいて、考え方は人それぞれだ。 早稲田大学の英国人留学生ローレン・アンダーソンは「私も含め、ボランティア活動に参加してくれる人は沢山いますが、ぜひ両方のパレード運営に協力してもらえれば嬉しいです。」と言う。

アンダーソンさんは、当初、TRPのフライヤーを配布するボランティアメンバーとして活動に参加。その後、1か月が経った頃には海外メディアに向けたPR担当と英文ウェブサイトの作成に携わるようになっていた。

 TRP運営委員会代表の葛城佳世さんは、「今年は特に大きな問題を起こすこともなく、パレードが2つも開催されることになりましたが、LGBTコミュニティーは国内で既にあらゆる困難に直面しているのが現状です。今年は皆さんにぜひ両方のパレードを楽しんでもらい、両方を比較して欲しいと思います。これをきっかけに、日本の社会が少しでも変わってくれればと願っています。」と語った。


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